公益社団法人南都楽所(なんとがくそ)は、旧南都楽所の伝統を継承し、雅楽の公演及び研修並びに研究、調査に関する事業を行い、雅楽の振興と普及に寄与する事を目的としています。 |
飛鳥や白鳳時代に伝わった古代朝鮮半島の新羅・百済・高麗の楽は仏教儀礼を荘厳にするための音楽として我が国にいち早く定着した。その後隋や唐との交渉が始まるとアジア各地、イランの音楽・舞踊も遣唐使や唐からの使者たちから、奈良にもたらされた。 天平勝宝4年(752)東大寺大仏開眼供養会で行われた雅楽はこれを契機に盛んとなり、日本における雅楽の出発点となり、東洋各地の楽舞が奈良の地で花開き、日本の雅楽として生まれ変わった。 これらの音楽・舞踊は、大宝律令によって、雅楽寮で教えられていたが、平安時代には、日本古来の楽舞とともに「雅楽」として整理統合された。 平安遷都の後も奈良では興福寺・薬師寺など大寺院で専属の楽団によって雅楽、伎楽が伝えられていた。 「南都楽所」(以下旧南都楽所という)は、一条天皇の長保3年(1001)に左方の舞と楽の奉行を命ぜられた狛光高(959−1048)を祖として始まった。その後幾度かの戦乱をくぐり抜け、郷土の寺社や関係者に支えられ連綿として受け継がれ伝えられてきたが、明治維新を迎え新政府によって太政官の中に雅楽局が設けられ、三方楽所といわれた京都・南都・天王寺の楽人は、伶人として雅楽局の職員となった。 盛大であった旧南都楽所も明治3年(1870)に廃止されることとなった。しかし、郷土の寺社への雅楽奉仕のため、一部の楽家は奈良にとどまり、寺社への奉仕や後進の指導とその保存に努力したが伶人廃止となる。その後南都の雅楽は西京伶人が下向し行われていたが、一般にも雅楽の伝習を許可する布告が出され、明治36年当時の宮内省楽部長であった芝葛鎮楽長の指導のもと「奈良楽会」が興された。 さらに大正4年には「奈良雅楽会」が組織されたが後継者不足と経済的裏付けもなく危機に陥った。 昭和7年春日大社を中心として、雅楽、田楽、細男などをあわせて伝承する「春日古楽保存会」を発足し、受け継がれることとなる。 昭和43年2月、「春日古楽保存会」から雅楽部門を独立させ、名称を「社団法人南都楽所」として、旧南都楽所の伝統を受け継ぎ設立した。平成25年4月1日公益社団法人に移行した。 |
現在の雅楽は、長い歳月の間に失われたものも多いが、奈良には天平の土の上に千数百年もの間、社寺の伝統行事などによって今も生き続けているのである。音楽・舞踊のように瞬時に消えてしまう芸術が、その土地にそのまま保存・伝承されることは非常に意義深いことである。しかも、アジアの各地のもとの国々ではその伝流がすでに失われていることから考えても、雅楽は古代東アジアの音楽・舞踊の貴重な文化遺産であり、世界の宝物とも言うべきである。 上述のように、社団法人南都楽所はこの雅楽の保存・伝承と後継者育成のため不断の勢力を重ねてきた。特に、むしろ海外において雅楽に対する関心が高まり、台湾・香港・マニラ・中国西安市などでの公演、1984年ロサンゼルスオリンピック芸術祭、1987年外務省派遣インド日本月間、1988年中国敦煌飛天供養雅楽回郷演奏、ヨーロッパ各地での海外演奏も多く行っている。雅楽は我が国にのみ伝承されている世界共有の文化遺産であり、今こそ日本が文化的な分野で国際的に貢献すべき時であろうと考える。
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【事業】 |
(1) 公演会及び講習会の開催による雅楽の振興と普及 主催や共催の公演や研修、依頼に基づく公演など、様々な形態の活動を行い、雅楽の振興と普及に努め る。 ○主催公演 ・春秋二季(5月5日・11月3日)に、技倆の披露並びに、雅楽の普及振興を図るため、公開演奏会を開催 する。 ○講習会、研修 ・初級者を対象に、「夏期雅楽講習会」を8月に5日間の日程で開催する。 ・月1回以上の合同稽古を実施し、技芸の継承に努める。 ・宮内庁式部職楽部による演奏会を鑑賞し、作法、技芸等の習得に努める。 |
(2)社寺の伝統行事等への参加、後継者の育成及び装束復元等による伝統の保存と継承 神社仏閣における伝統行事に参加、奉仕し、その行事における有形、無形文化財の伝承、伝統の保存と 振興に努める。また、県や市の主催行事や教育機関、各種団体の要請等に応じ、雅楽の演奏活動を行い、 その振興と普及に努める。雅楽に関係する伝統行事等の伝承を担う人材育成のために、ホームページ等で 広く希望者を募り、定期的に研修し、技芸の継承に努める。 ○伝統行事等への参加 ○県や市の主催行事や教育機関、各種団体の要請による公演の実施 ○後継者の育成 ・後継者の育成と技術指導のため、週1回の定例稽古及び月1回以上の合同稽古を実施する。 ・復興した御神楽の研修を実施する。 ・雅楽に関係する伝統行事等の伝承を担う人材育成のために、ホームページ等で広く希望者を募り、定期 的に講習 会を開催し、技芸の継承に努める。 ○保存及び調製 ・伝統的な様式に倣い、楽器装束を調製し、装束復元等を行う。 ・舞楽伝承のため、映像・資料等を作成する。また、以前からのメディアに加え、映像、画像などを電子 データとして、保存する。 ・装束、楽器等の保存及び補修を行う。 |
(3)雅楽に関する研究調査 雅楽と古典芸能に関する学術的な調査研究の実施 ○和舞の調査研究を行い、文献・資料の保存に努める。 ○楽譜等の調査・整理を行い、記録の保存に努める。 ○各地、各所に遺存する南都の雅楽・神楽に関する文献資料等を収集し、調査研究に資する。 ○雅楽理論などの文献資料等を基に、月1回程度研修する。 |
【稽古案内】 |
日 時 土曜日 : 午後7時〜 8時まで(初心者)
午後8時〜10時まで(中級以上) 場 所 春日大社 大宿所 など日曜日 : 午後2時〜 6時まで(中級以上) |
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中級者以上 鳳笙稽古風景 |
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初級者 笛稽古風景 |
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初級者 篳篥の稽古風景 |
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中級者 日曜総稽古の風景
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